変形性膝関節症(膝OA)は、膝の軟骨がすり減ることで痛みや動かしにくさが生じる病気です。しかし、膝まわりの筋力を強化することで、膝への負担を減らし、痛みの緩和や歩行改善が期待できます。ここでは「膝に過度な負担をかけない」ことを最優先に、大腿四頭筋・ハムストリングス・大内転筋・大臀筋・中殿筋の5つの筋肉を、すべて自重で効率よく鍛える方法をまとめました。
各運動は無理のない範囲で行い、1日おき(週3回程度)が目安です。体調や痛みの程度によって回数・セット数を調整し、始める前には必ず医師や専門家にご相談ください。
1. 大腿四頭筋(太もも前側を支える筋肉)
① クアッドセット(等尺性 大腿四頭筋運動)
- やり方
- 仰向けに寝て、膝裏に折りたたんだタオルやクッション(厚さ5cm程度)を挟む
- 太ももの前面をギュッと押しつけるように力を入れ、膝を伸ばす
- そのまま5~10秒キープし、ゆっくり力を抜く
- 目安:10回×3セット
- 効果:膝まわりの安定性アップ・痛みの軽減
② レッグレイズ(SLR: Straight Leg Raise)
- やり方
- 仰向けで片脚をまっすぐ伸ばし、もう一方は膝を立てる
- 伸ばした脚を床から約20~30cm持ち上げ、ゆっくり降ろす
- 目安:左右各10~15回×2セット
- 効果:大腿四頭筋の動的収縮を強化し、歩行時の膝安定性向上
2. ハムストリングス(太もも裏側の筋肉)
① シングルレッグ・ルーマニアンデッドリフト
- やり方
- 片脚で立ち、背筋を伸ばす
- 腰を後ろへ倒しながら上体を前傾し、対側脚を後ろに伸ばす
- ハムストリングス(太もも裏)に効くのを感じながら、上体を元に戻す
- 目安:左右各8~10回×2セット
- 効果:ハムストリングスのコントロール強化・バランス向上
② グッドモーニング
- やり方
- 足は肩幅、膝は軽く曲げる
- 胸を張り、股関節から上体を前に倒す
- ハムストリングスに伸びを感じたらゆっくり戻す
- 目安:10~12回×2セット
- 効果:ハムストリングスと腰まわりの安定性アップ
3. 大内転筋(脚を閉じる動作を担う内ももの筋肉)
① サイドライイング・ヒップアダクション
- やり方
- 横向きに寝て、下側の脚をまっすぐ伸ばす
- 下側の脚を床から10~15cm持ち上げ、ゆっくり下ろす
- 目安:左右各12~15回×2セット
- 効果:内ももの引き締め・膝内側の安定性向上
② アイソメトリック・アダクターセット
- やり方
- 仰向けで膝を立て、両膝の間に丸めたタオルを挟む
- タオルを潰すように思い切り内側へ押し合い、5~10秒キープ
- 目安:10回×3セット
- 効果:内転筋群の等尺性収縮による神経-筋協調性向上
4. 大臀筋(お尻の筋肉)
① グルートブリッジ
- やり方
- 仰向けで膝を立て、かかとで床を押す
- 骨盤を天井方向に持ち上げ、お尻をギュッと締めて1~2秒キープ
- ゆっくり下ろす
- 目安:12~15回×3セット
- 効果:お尻の引き締め・腰への負担軽減
② ドンキーヒップエクステンション
- やり方
- 四つん這いになる
- 片脚を軽く曲げたまま、お尻の高さまで蹴り上げる
- ゆっくり戻す
- 目安:左右各10~12回×2セット
- 効果:大臀筋とハムストリングスの協調強化
5. 中殿筋(お尻の横側の筋肉)
① サイドライイング・ヒップアブダクション
- やり方
- 横向きに寝て、上側の脚をまっすぐ伸ばす
- 上側の脚を床と垂直近くまで持ち上げ、ゆっくり下ろす
- 目安:左右各12~15回×2セット
- 効果:骨盤の横揺れ抑制・歩行時の安定性向上
② ファイアハイドラント
- やり方
- 四つん這いで膝を90°に曲げる
- 膝を横に開くように持ち上げ、ゆっくり戻す
- 目安:左右各10~12回×2セット
- 効果:中殿筋後部繊維の強化・体幹連動性向上
実施のポイント
- 呼吸:力を入れるときに「ハッ」と息を吐き、戻すときに吸う
- スピード:ゆっくり丁寧に。反動は使わず、筋肉の収縮・伸長を感じながら
- 痛みの有無:動作中に膝に響く痛みがある場合は中止し、専門家へ相談を
- 頻度:週3回程度を目安に、1日おきの実施が理想
印刷して活用しよう!
- このページを印刷し、各種目の横に「✔」や「回数」を書き込めるようにしましょう。
- 定期的に記録をつけて、ご自身の変化を実感してください。
- 定期受診の際に記録を持参すると、治療計画の参考になります。
監修・サポート:
ご不明な点があれば、担当の医師・専門家にお気軽にご相談ください。自宅でのトレーニングを継続し、膝の痛みをやわらげ、やりたいことを楽しく続けましょう!
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