その痛み、「歳のせい」で片付けていませんか?
「立ち上がるときに膝がズキッと痛む…」
「階段を下りるのがつらくなってきた…」
そんな悩みを「もう歳だから」とあきらめていませんか?
でもその痛み、本当に“加齢”だけが原因でしょうか?
実は、医学の進歩により、「変形性膝関節症(OA)」の発症と痛みの原因にはもっと深い理由があることがわかってきました。
膝の変形や痛みには「理由」があります
変形性膝関節症(Osteoarthritis:OA)は、単に“軟骨がすり減る病気”ではありません。
その背後には、次のようなさまざまな「原因」が重なって起こります。
なぜ変形性膝関節症になるの?
🔸 原因①:加齢による関節の変化
年齢とともに、軟骨の弾力性が失われ、ひざのクッション機能が弱くなります。これがOAの土台になります。
🔸 原因②:筋力の低下・姿勢のくずれ
太ももの筋肉(大腿四頭筋)が弱くなると、膝にかかる負担が大きくなり、関節の消耗が早まります。
🔸 原因③:体重の増加
膝は体重の3〜6倍の負荷を受けるため、体重が増えるとそれだけで関節へのダメージが大きくなります。
🔸 原因④:関節の使いすぎ・偏った負荷
片足ばかりに体重がかかる歩き方や、正座・しゃがみ作業が多い生活も膝へのストレスになります。
🔸 原因⑤:遺伝・性別・ホルモン
女性に多い理由のひとつに、閉経後のホルモンバランスの変化も指摘されています。
🔎 出典:木藤ほか(2016)、立花(2005)
変形だけじゃない「痛みの原因」
「変形してる=痛い」と思いがちですが、実はそう単純ではありません。
痛みの仕組みは、次のような複雑なメカニズムで成り立っています:
✅ 骨のトゲ(骨棘)が神経を刺激する
✅ 関節の内側が炎症を起こす(滑膜炎)
✅ 神経が伸びて、軟骨の中まで入り込む
✅ 神経が敏感になり、少しの刺激でも痛む
✅ 痛みを抑える仕組みがうまく働かない
✅ 脳の「痛みの感じ方」が過敏になっている
🔎 出典:石黒ほか(2020)
じゃあ、どうすればいい?
筋力をつける
太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えると、膝への負担が減ります。
痛みが強い時は無理をしない
痛みがある日は、無理に運動せず、軽いストレッチや膝伸ばし運動がおすすめ。
日常生活の工夫
- 階段は手すりを使う
- 正座を避ける
- 体重をコントロールする
- 膝にやさしい靴を選ぶ
🔎 ガイドライン:木藤ほか(2016)
痛みは、コントロールできる時代へ
昔は「歳だから仕方ない」と言われていましたが、
いまでは**“あなたに合った対策”を見つけて改善することが可能**です。
痛みの種類や原因に応じて、薬・運動・物理療法・心理面へのサポートなどを組み合わせる「テーラーメイド治療」が広がっています。
今できることから一歩ずつ
✅ 医療機関で正しい診断を受ける
✅ 自分の膝の状態を理解する
✅ 今日から少しずつ体を動かしてみる
たとえば…
椅子に座ったままの「膝伸ばし運動」
→ 朝と夜、10回ずつからスタートしてみましょう。
まとめ
✅ なぜなる? → 加齢だけでなく、生活習慣・筋力・体重・炎症などが関係
✅ なぜ痛い? → 骨・神経・炎症・脳の働きまでが関わる「複合的な痛み」
✅ どうする? → 筋トレ・運動・生活改善・個別対応がカギ!
「もうダメだ」とあきらめる前に、
今できることを、少しずつ始めていきましょう。
参考文献
- 石黒直樹ほか「変形性関節症はなぜ痛いのか?」日本ペインクリニック学会誌 Vol.27 No.1, 2020
- 木藤伸宏ほか「変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン」理学療法学 第43巻 第2号, 2016
- 立花陽明「変形性膝関節症の診断と治療」理学療法科学 第20巻 第3号, 2005
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