膝の痛みをやわらげる筋トレ方法|太ももの筋肉を鍛えて変形性膝関節症を予防

目次

「立ち上がるのがつらい」「階段が不安」そんな膝の悩み、ありませんか?

年齢を重ねると、こんな変化を感じる方が増えてきます。

・階段の上り下りがつらくなってきた
・椅子から立ち上がるときに膝がガクっとする
・歩くと膝に違和感や痛みがある
・運動不足が気になるけど、何から始めていいかわからない

実はこうした症状、**「太ももの筋力の低下」**が原因になっているケースが少なくありません。

変形性膝関節症は、50代以降の女性を中心に非常に多い疾患で、日本では約1000万人以上が罹患していると推定されています。初期は「なんとなく違和感がある」「疲れると膝が重い」といった程度ですが、徐々に痛みや腫れ、関節の変形へと進行することも。

その進行を防ぎ、今より少しでもラクに動けるようにするための第一歩が、筋力トレーニングなのです。

膝の負担を減らすには「太ももの筋肉(大腿四頭筋)」がカギ!

膝関節の周りには、膝を守ってくれる“天然のサポーター”があります。
それが**太ももの前側にある「大腿四頭筋」**です。

大腿四頭筋は以下のような重要な役割を果たしています:

  • 膝関節の安定性を保つ
  • 立ち上がりや階段昇降の際に膝を支える
  • 歩行時の衝撃を和らげ、関節への負担を分散する

この筋肉が弱ってくると、膝が不安定になりやすく、さらに関節にかかる負担が増えてしまいます。
それが痛みや変形、日常動作の困難さにつながります。

しかし裏を返せば、「大腿四頭筋を中心に筋肉を鍛えることで、膝への負担を減らし、痛みの軽減が期待できる」ことも分かっています。

特に自宅でできる筋トレであれば、特別な道具がなくても手軽にスタートできます。

理学療法士が勧める、自宅でできる膝トレーニング5選

ここでは、エビデンスのある運動を厳選して紹介します。
すべて週2〜3回、1回20〜30分程度からスタートするのがおすすめです(Øiestad et al., 2023)。

運動の中止基準

  • ズキズキとした痛みがある
  • 運動後に膝が腫れる、熱を持つ
  • 動作時に激痛が出る
  • 運動を続けて悪化したと感じる

これらの症状が出た場合、すぐに運動を中止し、医療機関受診してください。
無理をせず、自分の体と対話しながら進めることが大切です。

◆① ニーエクステンション(椅子に座って膝伸ばし)

効果:大腿四頭筋を安全に鍛える
方法:椅子に浅く座り、片足を前方にゆっくり伸ばし、3秒キープ→ゆっくり戻す
回数:10〜12回 × 2〜3セット
注意点:膝を完全に伸ばしきらないことで、関節への負担を軽減できます。


◆② カーフレイズ(かかと上げ)

効果:ふくらはぎ(下腿三頭筋)を強化し、バランス・歩行を安定化
方法:壁や椅子に手を添えて立ち、かかとを上げてつま先立ち→ゆっくり戻す
回数:12〜15回 × 2セット
注意点:転倒防止のため、必ず支えがある場所で行ってください。


◆③ サイドレッグレイズ(横向きで脚上げ)

効果:股関節の外側(中殿筋)を鍛えて、膝の横ぶれを防ぐ
方法:横向きに寝て、上側の脚をまっすぐ上げて2秒キープ→戻す
回数:10〜12回 × 各脚2セット
注意点:腰が反らないよう、お腹に力を入れて行いましょう。


◆④ チューブスクワット(ゴムバンド使用)

効果:下半身全体を強化できる万能種目
方法:チューブを両足にかけて肩幅に立ち、軽く膝を曲げて戻す
回数:8〜10回 × 2セット
注意点:しゃがみ込みすぎず、膝がつま先より前に出ないように。


◆⑤ 椅子スクワット(道具なし)

効果:立ち上がり動作を改善し、膝・股関節を一緒に鍛える
方法:椅子の前に立ち、ゆっくり座る→すぐに立ち上がる動作を繰り返す
回数:10回 × 2セット
注意点:背筋を伸ばし、足裏は常に床についている状態で行いましょう。

無理なく筋力アップするための“負荷の調整法

筋トレは「きつすぎてもダメ」「楽すぎても意味がない」
適切な負荷で、徐々に筋力を高めていくことが大切です。


基本の考え方:「ややきつい」と感じる程度が◎

  • 8〜12回で「ややきつい」と感じる重さや回数が理想
  • 14回以上できるようになったら負荷アップのサイン(「+2ルール」)

負荷を調整する具体的な方法

  • 動作をゆっくりにする:3秒かけて上げて、3秒かけて戻すだけで負荷UP
  • 静止時間を入れる:動作の一番きつい位置で2〜3秒キープ
  • 回数・セット数を増やす:例)10回×2セット → 12回×3セット
  • ペットボトルやチューブで負荷を追加する:水の入ったペットボトルや市販のゴムチューブでもOK

ポイントは「今の自分に合ったレベルから始めること」。
強すぎる負荷は逆効果になることもあるため、少しずつ慣らしていきましょう。

引用した文献の要約

今回、この記事を作成するにあたって引用した、世界中の研究者たちが行った信頼性の高い研究結果を、わかりやすい言葉でご紹介します。

文献①:膝変形性関節症に対する3種類の筋力トレーニングの効果

研究の目的:膝変形性関節症(KOA)患者に対して、以下3種類のレジスタンストレーニング(RT)が痛み・機能・筋力にどのように影響するかを比較。

各筋力トレーニングの特徴まとめ

トレーニングの種類動かす?どこでできる?特徴
等尺性(IMMS)動かさない自宅OK初心者向け。関節にやさしく安全に始めやすい
等速性(IKMS)一定のスピードで動かす(マシン使用)医療機関のみ最も効果的。専用マシンが必要で設備が限られる
等張性(ITMS)動かしながら力を入れる自宅OK身近で実践しやすく、継続しやすい筋トレ方法

この研究で分かったこと

まず、3つの筋トレすべてが「痛みをやわらげる」「動きやすくなる」「筋力がつく」といった効果があることがわかりました。つまり、筋トレはやったほうがいい!というのが大前提です。

その中でも、もっとも効果が高かったのが「等速性トレーニング(IKMS)」でした。

痛みの改善:IKMSが最も効果的
機能の改善(しゃがむ・歩くなど):IKMSが最も改善
筋力アップ(太ももの力):IKMSが最も強くなった

ただし、IKMSは専用のマシンが必要なので、医療機関などでないとできません。

一方で、自宅でできる「等張性(ITMS)」「等尺性(IMMS)」でも、ちゃんと効果があることが証明されました。

著者:Yutao Jiang, Jing Lu, Qingqing Wang, Jingwen Gao, Kun Zhang
雑誌名:PLOS ONE
発行年:2024年
巻号・記事番号:Vol. 19, No. 3, e0309950
DOIhttps://doi.org/10.1371/journal.pone.0309950

文献②:変形性関節症(OA)に対する抵抗運動(レジスタンストレーニング)の効果

世界中の27の研究(1,712人分のデータ)をまとめて調べた最新の分析です。
対象は「変形性膝関節症」や「股関節症」の方で、**筋トレ(抵抗運動)**を行った人たちの痛みや筋力、生活のしやすさがどう変わったかを比べました。

この研究で分かったこと

効果の項目筋トレによる変化
✅ 痛みの軽減しっかり改善されました。
特に5~8週間続けた人で効果が高い
✅ 筋力アップはっきりと筋力が向上しました。
どの期間でも効果があり
✅ 動きやすさ・日常生活5週間以上続けた人は動きが良くなり、生活が楽に。
ただし、4週間以下だとあまり効果が出ないようです。

研究ではさまざまな方法が使われていましたが、以下のような脚の筋トレが中心でした。

どんな筋トレがいいの?

・太もも前(大腿四頭筋)や後ろ(ハムストリングス)
・お尻の筋肉(中臀筋など)
・バンドやマシン、家でできる運動も含まれます

つまり、自分に合った方法でOK!水中での運動や軽い負荷から始めても、効果はちゃんと出ています

著者:Jaehyun Lim, Ahyoung Choi, Byeonggeun Kim
雑誌名Journal of Personalized Medicine(略称:J. Pers. Med.
発行年:2024年
巻号:14巻(記事番号:1130)
DOIhttps://doi.org/10.3390/jpm14121130

文献③:変形性膝関節症における筋力トレーニングの量と効果:痛みと身体機能への影響を調べたシステマティックレビュー

この研究では、変形性膝関節症(KOA)のある人に対して、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)が痛みの軽減身体機能の改善に効果があるかどうか、また「どれくらいの頻度・期間・強度で行えばよいか(=用量効果関係)」を調べました。

この研究で分かったこと

変形性膝関節症に対する筋トレの効果まとめ(患者さん向け)

内容わかりやすい説明
どんな運動が効果的?足の筋トレ(特に太ももの前側)が痛みを減らし、動きやすくするのに効果的です。
どれくらいやればいい?1回30〜60分を週2〜3回、2〜3か月ほど続けると効果が出やすいです。
どんな運動方法が多かった?1つの動きを8〜12回×2〜3セットくり返す方法が多く使われていました。
はじめはどのくらいの強さ?少しきついと感じるくらいの軽め(最大の半分くらい)から始めてOK。
どんな人に効果があった?膝の変形が進んでいる人にも、多くのケースで効果がありました。
どれくらいの回数で効果が出た?約24回(週3回×2か月)の実施で、痛みや動きやすさが改善した人が多いです。

無理なく「できる範囲で続ける」ことが大切です。

特別な器具がなくても、自宅でできる運動でも十分効果があります。

たとえば、椅子に座って足を伸ばす運動や、ゆっくり立ち上がる練習などが効果的。

【まとめ】筋トレは「膝を守る手段」自分のペースで始めよう

  • 変形性膝関節症や膝の違和感は、筋力低下と深く関係しています
  • 特に大腿四頭筋を中心に鍛えることで、関節の安定化や衝撃の吸収が期待できます
  • 筋力トレーニングは、薬や注射に頼らずできるセルフケアのひとつです
  • 無理なく、自宅でできる範囲からスタートし、少しずつ継続していきましょう

膝の痛みで不安な毎日を送っている方も、できることからコツコツ取り組むことで、未来の動ける体をつくっていけます。
あなたのペースで、はじめてみませんか?

Q&A よくある質問

週に何回やればいいですか?

週2〜3回が目安です。毎日やる必要はなく、筋肉を休める日(休養日)も大切です。

運動以外で膝の負担を減らす方法はありますか?

体重管理・日常の姿勢改善なども大切な要素です。
医師と相談して、総合的にケアしていくことをおすすめします

チューブや道具がなくても効果はありますか?

はい、自重だけでも十分な効果が期待できます。
慣れてきたらペットボトルやタオルなどで工夫するのもおすすめです。

どの運動から始めればいいのか迷います。

膝を直接動かすのが不安な方は体重をかけずにできる種目から始めましょう。
痛みがなければ「椅子スクワット」や「ニーエクステンション」にチャレンジしてみましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次