「変形はないのに、どうして膝が痛いの?」そんな悩みにお応えします
~レントゲンには映らない“痛みの理由”、ご存じですか?~
1. あなたも、こんなお悩みありませんか?
「お医者さんに“骨はキレイです”って言われたのに、階段の上り下りがつらくて…」
「レントゲンでは異常がないのに、膝がズキズキ痛む…これって気のせいなの?」
そんなふうに、説明のつかない膝の痛みに悩んでいませんか?
実はこのお悩み、変形性膝関節症の患者さんの中でもよくあるものなんです。
そして、ちゃんと“理由”があることが、最近の研究でわかってきました。
2. レントゲンに異常がないのに痛む…その理由とは?
レントゲンで分かるのは、「骨の形」や「関節の隙間の幅」など、骨に関する情報が中心です。
でも膝には、骨以外にもたくさんの組織があるんです。
レントゲンでわかること | 見えないけど大切なもの |
骨の変形、関節の狭さ | 半月板、滑膜、靭帯、筋肉、神経など |
たとえば「半月板(はんげつばん)」はクッションの役割、
「滑膜(かつまく)」は関節の中を潤してくれる組織です。
これらは、レントゲンでは映らないけれど、痛みに深く関わる大事なパーツです。
3. 最新の研究で見えてきた“膝の痛み”の正体
香港で行われた研究(Chanら, 2014)では、膝の痛みに悩む193人を対象に、
レントゲンと超音波検査を組み合わせて、どの組織が痛みと関係しているかを調べました。
【調査方法】
検査内容 | 説明 |
X線検査 | 骨の変形や関節の隙間の幅を確認 |
超音波検査 | 滑膜の腫れ、半月板の逸脱、水のたまりなど |
WOMACスコア | 痛みの強さを質問票で評価 |
3-1. 痛みの出方と“関係していたもの”
● 歩いているときに痛い人は…
所見 | 関係の強さ(r) | 解説 |
関節水腫(膝に水がたまる) | 0.217 | 歩行中の負荷で腫れが悪化しやすい |
外側半月板の逸脱 | 0.217 | 半月板がズレることで痛みが出やすい |
内側関節の狭さ(変形) | -0.192 | 関節の隙間が狭いほど痛みやすい傾向 |
● 階段の上り下りで痛い人は…
所見 | 関係の強さ(r) | 解説 |
関節水腫 | 0.194 | 曲げ伸ばし時に影響しやすい |
内側半月板の逸脱 | 0.170 | 深く曲げたときに負荷がかかる |
外側半月板の逸脱 | 0.201 | 両側のズレが関係している可能性も |
PFJ(膝前の関節)の狭小化 | -0.166 | お皿の動きがスムーズでなくなり痛みに |
● 座っているだけでも痛い人は…
所見 | 関係の強さ(r) | 解説 |
滑膜の腫れ(肥厚) | 0.355 | 安静時でもズキズキ痛む原因に |
このように、「いつ痛いか」によって、関係している組織が違うことがわかってきました。
4. お医者さんの判断をいちばん大切に
ここでお伝えしている内容は、医学的な研究結果をわかりやすくした情報です。
痛みの原因や治療の方針については、必ず医師の判断を第一にしてくださいね。
私たち理学療法士は、医師の指示のもとで「体の動き」や「筋肉の使い方」をサポートしています。
5. 痛み方によって、こんな考え方もあります
● 炎症が関係していると考えられる場合
状態 | 考えられること |
膝が腫れている・熱をもっている | 炎症が起きているサインかも |
座っていても痛い | 滑膜の炎症が関与している可能性あり |
何もしていないのにズキズキする | 動かさない時の痛みは、滑膜や水腫が原因のことも |
このような場合は、「動かしすぎず、冷やす・安静にする」などの工夫が必要になることもあります。
※どんなケアが適しているかは、医師や理学療法士と相談してください。
● 筋肉や関節の動きが関係している場合
状態 | 考えられること |
動き出しや階段で痛む | 可動域のかたさ・筋肉のタイミングのズレかも |
太ももの筋肉(内側広筋)が弱っている | 膝前面への負担が増える原因に |
お尻の筋肉がうまく使えていない | 歩行や階段時に膝へ負担が集中しやすい |
運動やストレッチで改善が期待される場合もありますが、
どこをどう動かすかによっては逆効果になることもあるため、専門家の指導が大切です。
6. まずは「痛みの出る場面」を整理してみましょう
膝の痛みが「いつ」「どんなとき」に出るかを自分で整理しておくと、
医療機関に相談した際のヒントになります。
痛みの場面 | 関係している可能性があるもの(研究より) |
座っているとき | 滑膜の腫れなど |
歩いているとき | 半月板のズレ、関節水腫 |
階段の昇り降り | PFJ(膝前)や筋肉の使い方、半月板の逸脱など |
7. まとめ:あなたの膝の痛みには、“理由”があります
- 骨の変形がなくても、痛みが出ることはあります
- レントゲンに映らない“軟部組織”が関係しているケースもあります
- 痛みを感じたら、無理せず相談することが大切です
- 医師や理学療法士と一緒に、痛みの原因を見つけていきましょう
あなたの膝が少しでも楽になるよう、この記事が参考になれば幸いです。
参考文献
- Chan, K. K. et al. (2014). Clinical, Radiological and Ultrasonographic Findings Related to Knee Pain in Osteoarthritis. PLoS ONE, 9(3), e92901.
コメント